バラ十字会

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神秘学を科学する 第1部

Scientific Mysticism Part 1

ウィリアム・ハンド

By William Hand

第1章 はじめに

 何世紀もの間、科学の世界と神秘学の世界は、外見が異なる2つの世界として共存してきました。私たちを取り巻く世界を、理解し探究しようとするそれぞれのアプローチは、お互いを許容してはきましたが、20世紀までは、それぞれに他を補う性質があるという気づきが、一般的な形で発展し始めることはありませんでした。

 科学と神秘学はどちらも、私たちが生きている宇宙を探究し、理解しようとしています。神秘学的なアプローチは、今のところ少数の人だけが理解している、主観的で、個人的で経験的なものであるのに対して、科学の研究法は、一般大衆に対して開放的で、客観的で、非個人的で実証的なものです。

 最近では科学者は、自分たちの分野の様々な発見により、以前は哲学と神秘学という領域にあった話題について考察しなくてはならなくなりました。たとえば、意識の意味といったことです。一方では、情報伝達の方法が進歩し、神秘学で伝えられていることや哲学の研究成果が容易に入手できるようになるにつれて、今までよりも多くの人が、個人的に、あるいはバラ十字会AMORCなどの組織とともに、このような題材を探究し始めました。

 神秘学について学び、その価値を立証するために実験を行うことによって、多くの人々が、自分では気が付かないうちに科学者になったり、あるいは少なくとも、優れた科学者にある探究心を身に付けたりしてきました。その効果は絶大でした。徐々に、古い迷信や信仰は捨てられるか、あるいはそれが何のためにあるのかが理解されました。そして、容易に実証できるような仕方で、ひとりひとりのために役に立つ学問だけが、そのまま残ったのです。また、宇宙はどのように活動しているのかという、神秘学的の観点からの考え方は、科学が急速に進歩することによって、排除されるのではなく、むしろ確認されています。明らかに現在、科学と神秘学を一体のものとして探究するための機が熟しています。

 科学の研究法は、時の試練に耐えて、私たちの世界を客観的に探究するための最も良い方法として、現在一般に受け入れられています。その方法は最初に世界を観察し、その活動の仕方を理解しようとします。そして、様々なことがどのように、そしてなぜそのように起こるのかを説明する仮説や見解が提案されます。次にこれらの見解は実験により試され、もしそれがうまくいって、厳しいテスト条件のもとで再現できるなら、それらの仮説や見解は、科学理論として確定され認められるようになります。それでは、神秘学のどのような点が、このことに当てはまるのでしょうか? 

 神秘学もまた、世界を観察して、その活動の仕方を理解しようとしますが、神秘学では個人的な、つまり自分の内部の観点からそうします。世界中の神秘家が共通に体験し共有している事柄に、科学が説明を提供できる段階に、私たちはもうすでに到達しています。そして、そのような説明がまさに、このシリーズの記事で私が探究して行きたい事柄です。いずれ私の見解が、全く正しいわけではないということが明らかになるかもしれませんが、私たちの素晴らしい、そして情愛深い宇宙の探究のための出発点になることを願っていますし、その方法は、これまでに意図的には一度も試みられたことがないものです。このシリーズは私が2000年と2003年にバラ十字の全国大会で行なった講演の内容と、新しいアイデアを含んでいます。これらが、皆様にとって興味深く刺激的なものとなることを願っています。

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。