バラ十字会

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神秘学を科学する 第7部

Scientific Mysticism Part 7

ウィリアム・ハンド

By William Hand

第3章 M理論

M-theory

 重力子は、特定の種類のひもと、目に見えない次元だけで起きている振動から生じると仮定するならば、他の素粒子を生じさせているひもにも、目に見えない次元だけで振動しているものがあるということが考えられます。実際に物理学者は、M理論の一部として、真剣にその可能性を検討しています。M理論のMという文字が何を表しているかは誰も知らないのですが、M理論の本質は、1995年以前に提唱されていた、競合する5つのひも理論を統一することにあります。

 1995年に、才気あふれる物理学者エド・ウィッテンが、すべてのひも理論をひとつに統一する可能性を示し、それに「M理論」という名前を付けたのです。5つのひも理論を統一するためには、目に見えない次元のうちの少なくともひとつが非常に大きいこと、宇宙そのものよりもはるかに大きいことが必要でした。この理論では、私たちの宇宙は膜、すなわち、目に見えない高位の一次元を固定した断面であると考えられています。この一次元が追加された結果、目に見えない次元の数は7に増えており、合計では11次元の理論となっています。ひもは、これらの次元で振動することができるだけでなく、それ自体が、多くの次元にまたがる形をしている可能性があります。ですから、ひもと呼ばれるものには、薄板のような形や、しずくのような形や、より高次元の形の対象が含まれるように理論が拡張されています。すべての対象は、p-ブレーン(p-brane)という専門用語で分類することができます。たとえば、1次元の対象、つまり1-ブレーンはひもであり、2-ブレーンは膜であり、7-ブレーンは7次元の対象のことを表しています。現在のところ、あらゆる素粒子と、あらゆる力(ただし重力は除きます)の背後にあるひもは、私たちが日常経験している4次元だけでなく、他の次元でも同様に振動しているにもかかわらず、その形は、4次元内にあるのではないかと考えられています。

あるブレーンから離れていく重力子の想像図

 しかしながら、M理論によれば、現在知られていない素粒子と力を構成するひもという対象とその振動は、見えない次元にも存在している可能性があり、必ずしも私たちの物質的な世界に限定されてはいないという興味深い可能性が示唆されています。そのため、M理論においては、ひも理論は、あらゆる次元の形をしている対象の基本振動の理論になります。このことから物理学は、M理論が進歩を続けるにつれて、目に見えない次元において、全く新しい世界が文字通り展開されているという興味深い可能性があることを認めています。この理論的な背景を根拠とすれば、私たちは、ソウルの力をひとまとまりにしている結合力だけでなく、おそらくソウルの力を構成している基本的な素材も説明することができます。つまり、高次元で振動しているひもという対象、すなわちp-ブレーンがそのような素材だと考えられます。

最近生まれ変わったひも理論、すなわちM
理論によれば、以前のひも理論のそれぞれ
はひとつの理論の5つの別の側面である。

 この記事の第5部では意識について議論し、意識のレベルは複雑さに依存するという結論に達しました。言い換えれば、自己意識に達するためには、あるレベルの複雑さが必要とされます。神秘学では、次のことが一般的に認められています。つまり、〈ソウル〉あるいは〈ソウルの力〉と呼ばれるものの働きとして知られているのは、私たちの内部に、意識を持つ個別の実体のようなものを生じさせる働きです。

 したがって、〈ソウルの力〉は、体中を絶えず流れている電流のようなものであり、この電流によって、私たちが利用できるエネルギーが供給されています。バラ十字会では、この流れのことを「ソウル人格」 (Soul Personality)と呼んでいます。この流れは、ひとりひとりに固有のものであり、巨大な波の中に出現する個別の波形にたとえることができます。そしてこの流れ全体が、ソウルと呼ばれるものに相当しています。量子物理学の用語を使用すると、以下のような対応を考えることができます。

・ソウル人格=量子の粒子性
・ソウル=量子の波動性

 それでは、この流れはどのようにして生じ、なぜそれが意識を持つのでしょうか。次のように考えることができます。〈ソウル〉は多次元にまがる存在であり、M理論によって概念が拡張されたひもから構成されていて、重力子の働きによって結びつけられています。そして、この重力子が、根源的生命力(VLF)の非物質的な側面のひとつです。

 このような複雑な構造は、人間の理解を超えていますが、すべての宇宙に存在していると考えられます。このソウルという存在の構成要素は、情報とエネルギーの交換によって複雑さを増していき、自己意識という種類の意識を獲得するに至ったのでしょう。自己意識とはソウル人格が自己を知覚することですが、ソウル人格は、同時に〈ソウル〉全体も知覚しています。別の言い方をすれば、ソウルの個々の要素である人格には、自由意志があり、ソウル人格の使命は、〈ソウル〉の意識が進化できるようにすることです。個々の要素であるソウル人格は、「全体」の役に立っています。この場合の「全体」とは、多次元宇宙のすべてを含むものだと考えられるでしょう。

 バラ十字会の学習では、ソウル人格は、誕生の際に最初に息をした瞬間に、人体に入るとされています。おそらく、次のような事態が起こっているのだと思われます。生命にふさわしい物質が振動し、初めての呼吸が行われると、調和した、重力である吸引力が生じます。この吸引力により、VLFのうちの非物質的な極性を持つ部分と、ソウル人格と呼ばれる、意識を持つ存在が引き寄せられます。そしてこのソウル人格は、人間の体の中に存在する、内なる師(Master within)となります。

 バラ十字会で「転化」と呼ぶ死に際しては、これと反対のことが起こります。最後の息を吐き出すと、その結果、体の中の電磁気的な活動は減少して、重力である吸引力が減少します。そしてソウル人格は、もはや物質的な次元とのつながりを保つことができなくなります。

 次の第8部では、転化について、さらに詳しく検討していきます。また、カルマと生まれ変わりという概念を科学的見地から見ていくことにしましょう。

参考文献
The Elegant Universe by Brian Greene (1999), ISBN: 0-099-28992-X
http://www.pbs.org/wgbh/nova/elegant/program.html
上記のサイトの「洗練された宇宙」という動画では、この記事でご説明した科学理論の一部を、ブライアン・グリーンが分かりやすく説明しています。ぜひご覧ください。(英語)

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラのこころ」の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。